アラサー以上好みの、美術の知識を増やせるマンガと小説のおすすめ
そういえば何でこんなに美術品に興味もったんだろうなぁ
最近自分の中でこの疑問を反芻しています。
が、まぁ途中で記憶が薄れてふわふわしておなかが減って中断されます。
ただ大学時代から今まで、美術への興味の類を広げる際にきっかけをつくってくれたものならお話することができます。
はい、私のもう一つのバトルフィールドへようこそ。
漫画と小説です。
え、フィクションじゃんと思われる方々は左頬を差し出してください。
私の愛のむちが飛び出します。
今回ご紹介する作品は、キュレーターや旗師が主人公になったもので、美術品をきっかけに様々な事件や出来事に巻き込まれていく話がメインになります。
もちろん、お話の流れで時に事実を捻じ曲げなければならないときもありますが、お話の中で取り上げられた美術品とその鑑定方法などは実際に調べられて描きこまれているので信用に足ります。
何よりも正しい知識を得るというよりは、そのお話に出てくる美術品・芸術をもっと知りたいと思うようなきっかけをくれるという意味で私はおすすめしたいと思っています。
ではまず超メジャーなものから
ただ、個人的には「天使と悪魔」のほうが面白かったです。
余りにも有名なものなので敢えて中身についての説明はしません。
Amazon大先生のリンクも貼り付けましたのでそちらでご確認頂ければと思います。
こちらで面白かったのは、謎解きをしていく過程で美術品やそれの背景にある社会学的、民俗学的、宗教的な知識が主人公たちによって話されていくこと。あんまもう覚えてないけど。
そしてそれによって、美術品が単に鑑賞されるだけの無機的な嗜好品のものではなくて、政治的にもしくは宗教的に強い有機的な力を持つとされ、制作されてから100年以上経つ今も多くの人々の様々な種類の畏敬の念を持ち合わせているものとして描かれていること。
それが嘘だろうと本当だろうと、これまで一面だけで捉えていたものが、その背景によって見る目が変わるという、読者としての自分の心の動きも面白く感じます。
ほら、まるで不良少年が雨の中子猫を拾ってる姿とか、現実で一切見たことのない漫画のシーンに何故か共感して主人公と一緒にその不良少年に惚れちゃうみたいな。
今だったらノーリアクションで次のページにいきますがね。
あとはやっぱり多くの教会やオベリスクだったり、観光地がいくつかピックアップされているので、物語のファンになった人には聖地巡礼が決行できます。
私もルーブル美術館の逆さピラミッドを見たときは感動して何枚も写真を撮りました。
人が全然いないときに撮れた満足の一枚。
お次はこちら
フジタ大好きです。こちらもメジャーなはず。
贋作のみを取り扱う「ギャラリーフェイク」のオーナーの藤田は、元メトロポリタン美術館のキュレーターとしての一級の審美眼と修復技術を持つ。世界各国で正規や悪徳業者の間を練り歩いて仕入れた真作・贋作の一級品たちを様々な人間ドラマの中でさばき、美術界の裏の虚飾に挑む。
この漫画の好きなところは、何よりも取り合上げる作品、作家のジャンルが多岐に渡っていて好奇心を揺さぶり起こしてくれます。
それこそ、ゴッホの「ひまわり」、ティファニーのアイリスブローチ、根付、中国茶器、魔鏡、ペルーの生贄となった少女のミイラなどなどなど。
またそれぞれに詳しい専門家のような登場人物たちも個性が強く(宝石泥棒兼宝飾品店オーナー、いつも貧乏くじ引くトレジャーハンター、元銀行員のサラ金など)、フジタのことを貶めつつも助けたりする寸劇が面白い。
ティファニーのアイリスブローチ
好きすぎて、かなりこの漫画からの影響が大きく、様々な基本知識をここから得ています。
正直この漫画のおかげで、更に美術にのめりこんだというのもあるかもしれない。
というのも、美術品などは個人的な視点による鑑賞が第一ですが、その作品を仕上げるための作家さんの苦悩やひらめきなどのエピソードを事前に知っているならまだしも、完成品だけを目の前にして「何か感じ取れ!」と言われても難しいと思います。
ただ、他者がその作品に対して感情を露わにしているところを見ると、それがどのような感情なのか自分も同じ作品に対峙した時に感じたいと私は思ってしまいます
。
それで一番その感情の表現を読み取りやすいと感じたのが漫画や小説なんです。
そして個人的には共感度が一番高いのは、視覚的に訴えられる、人の表情を一コマに切り取る、そして人の内面が描写されている漫画だと思っています。
だから「スラムダンク」を読んだ人の適当に見積もっても60%くらいはバスケに目覚めたんだと思います。だってあんな感動をあんな仲間と味わいたいもの!!
なので、この「ギャラリーフェイク」の登場人物が感動したその作品たちに、私も出会いたいがために多くの美術館に顔を出すようになったのです。
北森鴻著 <冬狐堂シリーズ>
冬狐堂シリーズは、旗師の宇佐美陶子が主人公の推理小説です。
旗師とは、店舗をもたずに営業する骨董業者のことで、自身の審美眼によって品を市や店舗から競り買い、値をつけて売りさばくというディーラーのようなお仕事になります。
美術品を扱う小説は多くありますが、一番はまったのは北森先生の小説でした。
これまで一切興味がなかった陶磁器を始めとする骨董品に対しての知識はもちろん、
この「狐闇」においては日本の美術界の闇の部分でもある、明治政府による最大の愚行・神仏分離令が発令されたことによる廃仏毀釈についてライトアップされています。
もちろんストーリー自体はフィクションですが、廃仏毀釈によって日本人自ら国の文化を軽んじ、寺を壊し、多くの美術品を海外に流出させたことは紛れもない事実。
METでも狩野山雪筆「老梅図襖」を見ましたが、これもその被害者。
元々は篤姫で有名な妙心寺 天璋院の一壁として飾られていたものだが、この政策によって個人のコレクターに売られ、更には、そのコレクターの家にフィットするために元のサイズよりトリミングされてしまったのです。
言葉を失います。
ちょっと話はずれましたが、日本史でやったのにすっかり忘れていた平和ボケの私にも、改めて警鐘を鳴らしてくれます。
そして最後、これはちょっと異色かも
穂積著 「さよならソルシエ」
ちなみに「このマンガがすごい!」の2014年オンナ編の第一位に輝いております。
のちの天才画家ゴッホとその弟である画商のテオドロス。生前一枚しか絵を売れなかったが、その彼を天才になれたのは弟による奇抜な策略と秘めた野望によるものだった。。。
色々話すとネタバレになってしまって面白くないのでやめますが、
これこそ絵画、画家そのものに対して興味を惹かれるような一冊じゃないでしょうか。
フィクションであろうとなかろうと作家自身とその周りの人々にまつわるエピソードがリアルに描かれ、各々の感情が露わになり、また作品に対する情熱も描かれています。
「のだめカンタービレ」など、やはり演者・作家が登場人物となる作品は、そのキャラクターに心を重ねて、自分では踏み入れたこともない世界に対して投身できたような疑似体験ができます。
そしてそこでの成功、失敗への浮き沈みに共鳴してしまうんですよね。
ちょっと余談ですが、そういった作品の漫画をいくつか紹介します。
<クラシック ピアノ ショパン> 一色まこと著「ピアノの森」
<社交ダンス> 竹内友著「ボールルームへようこそ」
ちょっと長くなっちゃいました。いかがだったでしょうか?
私の美術品に対するミーハー度合が単に強く映っただけのように思われますが笑
個人的には一番わかりやすい美術品への近道だったのでご紹介しちゃいました。
まじで「ギャラリーフェイク」はおすすめです。ぜひぜひ見てみてください。