アラサーOLがアートでアレコレやってみるブログ

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元ファッション・バイヤーが魅了された「モダン・ビューティー展」のファッション・アーカイブたち

こんにちは、ゆきびっちです。

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先日、箱根ポーラ美術館で開催されている「モダン・ビューティー展」にお邪魔させていただきました。

www.polamuseum.or.jp

今回はその模様をレポートしたいと思います。

 

なぜモダンか? ファッションと近代の関係性

 さて、みなさん、芸術はどんな目的で作られていると思いますか?

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エミール=オーギュスト・カロリュス=デュラン<母と子(フェード夫人と子供たち>1897年

同展覧会は19世紀から20世紀前半の作品が展示されていますが、その時代の人々は、現代人の感覚に近いと考えられます。

この頃、産業革命が起こり、モノを大量生産できるようになり、情報が世界をまたがって流れ始めていました。

 

新しい情報が常に舞い込み、当時生きていた人々は、これまで守ってきたものへのアップデートを毎日のように行わなければならなかったのでしょう。
それは、SNSなどから情報を絶え間なく入手している現代の人々の様子と、余り変わりがないのかもしれません。

 

そんなとき、フランスの詩人ボードレールは、「その時代ならではのもの」を、移ろいゆく時間の中から取り出して、作品の中に残すことを芸術家たちに薦めました。

まだ写真のない時代、芸術に「アーカイブ(保存・活用)」という役割が与えられたのです。

そして、「その時代ならではのもの」として挙げられたものひとつに「ファッション」もありました。

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 今回のモダン・ビューティー展は、そのような激動の時代に、技術と思想の発展によって移り変わっていく、「女性のファッション」を切り口にして美術作品を展示しているのです。

 

アーカイブされたファッションたち

さて、展示は19世紀半ばから順に、時代ごとのファッションを追っていく形で進んでいきます。

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※今回は特別な許可を頂いて館内を撮影しております。

1850年代のドレスの裾がドーム型に広がったクリノリン・スタイルから始まり、ポール・ポワレのコルセットの排除を超えて、1920年代のアール・デコ・スタイルまで。

実際のドレスと、そのドレスを纏った女性の肖像画が同じスペースに展示され、見比べることができます。

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 また同じ空間に、ファッション以外にアーカイブされた「当時のもの」。例えば、近代を象徴する電車ピカソキュビズムなどの作品が並列しているので、背景の時代を照らし合わせて楽しむことができます。

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アンリ・ルソーエッフェル塔とトロカデロ宮殿の眺望>1896-98年

※ドレスのスタイルのご説明は割愛しましたが、一部こちらの記事でご説明していますので、よければ読んでみてくださいね。

womankind.hatenablog.com

 

 

ここは見てほしい、ファッションのアーカイブ

 <当時のキラキラ女子が注目した100年以上前のファッション雑誌>

ファッションといえば、やはり情報力が大切。
19世紀にはファッション雑誌が次々と刊行され、ファッションの流行がヨーロッパ各地に広まるようになります。

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今も高い人気を得ている「VOGUE」も1890年代に発刊されました。

 

これら雑誌に入っていた、カラー版画の「ファッション・プレート」は、今の雑誌ならば「今年の春!これを買わなきゃ損!」という特集ページに当たるのでしょう。

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<シック・パリジャン>(ファッション・プレート)1910年代

ものによっては、一枚に何人もの着飾った女性が描かれ、そのとき流行していたファッションを一度に見ることができました。

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コート・ダジュール/テラスでの宴>(ファッション・プレート)1915年

ここで画家とは異なる、イラストレータという存在が出てきます。

実はファッション・プレートは、洋服をデザインするデザイナーと、それを描くイラストレーター、そしてイラストを再現する印刷者、3つの高い技術力が発揮されて初めて完成するものでした。

それは芸術の域に達しており、現代でもファンは多いと言われています。


ファッションの流行によっても、プレートの様相が大分変ってくるので、そこもチェックしてみると、さらに楽しめると思います。

 

 

<女性の生活と共に進化した、溜息漏れる化粧道具たち>

 この展示会の中で、ただただ溜息が漏れ続けたのが、化粧道具のコーナー

男性は揺れるものに本能的にときめくようですが、女性はキラキラしたものに心を奪われてならないようです。無意識に見つめ続けてしまいます。

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<球形ケース入り花文香水便>19世紀後半

19世紀は、女性は体に負担のかかるドレスを着ていたため、室内での行動し、お化粧もナチュラル系が流行っていました。

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エミール・ガレ<騎馬人物文香水瓶>1880年代

そのため、化粧道具には、化粧水や香水を入れる華美な装飾のガラス瓶が多く、女性のプライベートな浴室や化粧室を彩りました

 

20世紀にもなると、女性たちは外で活動的になり、ロシアバレエの影響から華やかなお化粧が流行したために、携帯用コンパクトケースが登場します。

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<金属ベルト付 5種入りコンパクトケース>1920-50年

 なかはフェイスパウダー、チーク、櫛、口紅、反対の面にはタバコとマッチが入るようになっているのだとか。

現代にもマッチするような機能性を持ち合わせています。

 

 

<男と女はいつでもすれ違う ファッショニスタ画家たちの野望>

女性のファッションに口出す、小うるさい男性ってたまにいません? 逆もまた然りですが。

 

どうやら画家のマネは、もともと上流階級に生まれて、センスも洗練されていたためか、描くモデルの女性のファッションを強く意識していたらしいです。

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エドゥアール・マネ<ベンチにて>1879年

画家自らが、モデルのスタイリストになったり、どうやら婦人服店でモデルと一緒に服を選んだりしたこともあったようです。

 

ほかにも有名なルノアールの展示された作品を見てみると、気づくことがあります。

こちらと……、

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ピエール・オーギュスト・ルノワール<髪かざり>1888年

こちら。

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ピエール・オーギュスト・ルノワール<レースの帽子の少女>1891年

なんと、服が同じ?

そう、仕立屋の息子だったルノアールは幼い頃からファッションに触れており、マネと同じくらいのこだわりをみせます。

おそらくお気に入りだったのか、女性が綺麗に見える服とわかっていたのか、ルノアール同じ艶やかな素材の白のパフスリーブのドレスを違ったモデルに着せて、描きました。
ときにはモデルのために、帽子を作ってあげることもあったそうですよ。器用ですね。

 

現代の小うるさい男性にはちょっぴり「出直して来い」と言いたくなりますが、スタイリストとしてモデルを綺麗にしてくれるという意味では、マネやルノアールと一緒にショッピングに行ってみたいものです。

 

まだまだ話足りない「モダン・ビューティ展」ですが、9月4日まで開催中です。

会期中は、館内にあるレストランでは特別メニューがあったり、箱根ならでは森の遊歩道の散歩道があったりと、一日中過ごすことができます。

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ポーラ美術館ならではの圧巻のコレクションを、国内で見ることができますので、ぜひこれからの季節、足を運んでみては?

 

www.polamuseum.or.jp