アラサーOLがアートでアレコレやってみるブログ

ブログ名変更しました(再)。アート初心者大歓迎! アートの面白さをナナメ上の視点から追求していくブログになります。

映画<黄金のアデーレ>を見てきてまじめに文化財返還問題を語ってみた話

こんにちは、ゆきびっちです。

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顔はパンパンですが、案外標準体重です。

実は先日「黄金のアデーレ 名画の帰還」の試写会に参加してきました。

初めての試写会なのではしゃいだのですが、更新が公開してちょっと経ってからになってしまったことをお詫びします・・・。

 

golden.gaga.ne.jp

主役はイギリス人女優で、2006年に「クイーン」でエリザベス女王を演じて主演女優賞を取ったヘレン・ミレン。個人的にはブルース・ウィリスと共演した「RED」「RED2」の元MI6の名狙撃手ヴィクトリア役の彼女が大好きすぎるんです。

 

「黄金のアデーレ 名画の帰還」は、実話を元にしています。

映画の主役はなんといってもオーストリアを代表する画家クリムトの「黄金のアデーレ」

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この作品は実は第二次世界大戦中、とあるユダヤ系資産家の家からナチスが略奪したもの。幸いナチス軍内の目利きの目に留まって保護されたため、なんとか戦禍を免れてオーストリアの美術館に収蔵されました。
オーストリアモナリザとして国中に愛されるようになった「黄金のアデーレ」。
しかし20世紀が終わる頃、アメリカ在住のその資産家の家族が「伯母の絵を返してほしい」とオーストリア政府に要求したのです。

 

その資産家の家族がマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)。

「黄金のアデーレ」のモデルは、彼女の伯母であるアデーレ・ブロッホ=バウアーだったのです。
そしてマリアとタッグを組んで国レベルのガチンコ勝負に出たのがシェーンベルグの孫であり、まだ駆け出しの弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)。

彼らは、国家レベルの訴訟を起こすことができるのか?そして絵はマリアの元に戻るのか?

 

映画のよかったところを簡潔にまとめると、

・テンポがいい

・映像が美しい、っつかアデーレ美しい。

・日本人もっとハグしたらいいのにと思うくらいにハグの大切さが身に染みた

映画の総評なんて初めてだから下手なのはわかっているけど、もうちょっと気の利いたこと言おうよって思われた方。これが限界。ごめんなさい。

 

でも本当にテンポがいいです。
ストーリーの展開もそうだし、マリアとランディの会話のテンポも良いし、現在と過去の映像の切り替え方も私は好き。
そして映像ですが、ヨーロッパ全体が昔の建築をそのまま残す文化があるためにオーストリアの美しい建築物や、オーストリアの経済を支えたユダヤ系の人々の華美な生活の様子など目の保養になるものがたくさん盛り込まれています。

個人的には聴覚的にも(昔ドイツに住んでいたこともあり)ドイツ語が入り混じっていて、懐かしい気分になりました。

 

あとはネタバレになるから余り詳しくは話せませんが、やっぱりハグいいなぁと。
エロい言い方しかできませんが人の体温を感じるって大事
言葉だけでは言い尽くせないものが腕や身体の圧力にかかってその人に伝わると考えると、日本人もこれだけハロウィーンやクリスマスなどでパーリーピーポーして欧米化しているのならば、友人でも家族でもしっかりハグすればいいのにと思います。
今度のりこ(母)をいっぱいハグしよう。

 

早速話が逸れましたが、今回の試写会の最後に美術手帖」の編集長・岩渕貞哉さんと評論家の山田五郎さんとのトークショーがあり、今回の映画で美術において考えるべきことを話してくださったので記しておきます。

※対談の内容ずばりではありません。対談を踏まえての私の意見となります。

 

<美術作品はどこにあるべきなのか?>

今回はナチスによる個人資産の略奪ということで主人公が作品の返還を求めていますが、そもそも美術作品はどこにあるべきなのか?ということ。

 

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前にニューヨークのメトロポリタン美術館に訪れた際に、明治維新時の廃仏毀釈の影響か、日本国内で保存すべき狩野山雪筆の<老梅図襖>(写真)が個人に売りに出され(しかもそのときに飾りやすいようにトリミングしやがって)たというエピソード付で展示されており、がっかりしたのを覚えています。

廃仏毀釈:もともと日本は神も仏も混じった状態で信仰されていたのを、明治維新時に権力を分散させるために、神道と仏教で分けた政策。それによって寺院に眠っていた多くの貴重な神仏関係のものや今日では芸術品とされるものが壊されたり、海外に流れたりした。

 

日本の宝が一時の混乱のために国内で保存保善できずに、海外にばらまかれているなんて、と。

でもね。

逆の立場で考えれば、日本の美術館に収蔵されている海外のものを、特に箱根にあるピカソやルネラリックの作品群などを、全て「返せこのやろう」と返却を求められたら、ちと困るわけで。
海外に行かずとも国内で見られる世界の宝というのは、今後生まれてくる子供たちの文化的教育などを考えたら、やっぱり国内にあってほしいわけなのです。

かといって日本の宝は、日本の気候・風土で生まれたもので、この日本にあるからこそその美しさを輝かすことができるんだから返してほしい!なんてワガママすぎるのでしょうか。

 

<国同士の貸し借りには限度あり 
深掘りしすぎると色々出すぎるぞ歴史の問題>

ちなみに、「全ての美術作品を持ち主である国に返して、展示したいときに国間で貸し借りすればいいじゃないか」なんて乱暴な考えは通じません。

 

何故ならば、

・美術品の貸し借りができるほどの施設設備を備えられる美術館は国内有数しかないこと。

※かつ、おそらく都市部に限られるので、文化的な地域格差が生じる可能性がある。

 

・そもそもの持ち主である国が存在しない、わからないケースもあること。

ハンガリー王国の美術作品が出てきたとして、現地図に直すと5か国に跨っているけど、どこに渡す?誰が所有権をどのような条件で勝ち取るの?

 

ナチスの略奪品以外にも、諸国が植民地から奪ってきたものもあること。

※日本もね。

 

・あとはもっと色々あるかもね。賠償金とか生じたらやばし

 

こーんな小難しい文化財返還問題ですが、一応1972年に文化財不法輸出入等禁止条約が定められて、これ以降は美術品などの文化財が不法に取引され、国外に持ち出されることを禁止しています。

が、これ自体は盗難品などの誰でもわかるような不法取引が対象で、また1972年以前のものについては適用されないと

ということで、訴えられた側は訴えた側と交渉してこの問題を個別に解決していかなければいけないわけです。

今回の<黄金のアデーレ>も個別に解決されたうちの一つ。

こんなことを考えながら映画を見ると、また別の視点が生まれて面白いかもですね。

 

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ちょうどブログを書いているときに見つけた朝日新聞の記事を参考までに。

朝日新聞GLOBE|文化財は誰のものか--交渉の枠組み

 

ちょっとまじめな話になりましたが、今日はここまでー

それでは♪

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