乙女心から気持ち悪いまで、時代のコレクションが立ち並ぶオランジュリー美術館
こんにちは、ゆきびっちです。
皆さんお金持ちって羨ましいって思いませんか?
私は特にお金への執着も結構あるために、宝くじ3億円当てたら的なことを妄想することが大好きです。取らぬ狸の皮算用。
さて、しかし心からのお金持ちというものは精神的なゆとりがあるもの。
私みたいに「3億円当てたとしても都内山の手付近に土地と建物買ったらゼロになるじゃないか」などとありもしないお金に神経をすり減らすまで悩むような奴は生まれながらの庶民といえるでしょう。
昔の富豪、貴族ほどそういったお金を税金対策なども兼ねてか、自分たちの豊かな趣味に投資することに注力をしていました。
それは美術品の収集においてもそうです。
今回は、そんな貴族たちが築き上げた美術品のコレクション、ニューヨークではフリック・コレクション、パリではオランジュリー美術館に所蔵されるポール・ギヨームとジャン・ヴァルテルのコレクションを2回に渡ってご紹介したいと思います。
<19世紀を代表する近代作家たちのコレクション オランジュリー美術館>
ルーブル美術館から徒歩10分くらい、チュイルリー公園内にあるオランジュリー美術館ですが、地下と1階(グランドフロア)の2層の美術館になっております。
1階は何度もご紹介しているモネの睡蓮の間になりますので、ここでは割愛致しますね。
19世紀の代表的な絵画の派閥、印象派とポスト印象派の作品を多く所蔵するオランジュリー美術館の地下階。 セザンヌ、マティス、モディリアーニ、モネ、ピカソなどなど日本でも人気の作家の作品が多く所蔵されています。
先ほど富豪と言いましたが、正しくはジャン・ヴァルテルもポール・ギヨームもどちらも美術品を取り扱う画商です。彼らの偉業といえば、当時世間的に認められてなかったモディリアーニの才能を見出して売れっ子にしたことがあります。
さて、美術館に入るとはじめに展示されているのは、ポールの部屋の模型になります。
壁一面に絵画が飾られている。
成金趣味だったのかな?と思ってしまうくらい。
コレクション自体も「良いものは良い」という若干ジャイアン的な野生の勘が働いて買い付けていたこともあるそうですが、彼の審美眼は一級です。
<これは見たほうがいい作品群>
作家別に作品がまとまっているので比較的見やすい展示空間になっております。
その中で無音の歓喜の悲鳴を上げた作品群をご紹介します。
①マリーローランサン
ピカソとも交友関係にあったマリーはキュビズムのミューズ(女神)ともいわれていたそう。しかし彼女の有名なパステル調の夢遊病みたいな女性たちの描き方は、キュビズムから脱した後に確立したものです。
ハイブランド・シャネルの創設者 ココ・シャネルの肖像画。
あのキッツイ性格のデザイナーもここまで柔らかく描いてしまうのはすごい。
彼女の好きな題材の「若い女性と動物たち」。
動物の毛質も人間の肌感も光の加減なども一切合切ぺったりと描いてしまう彼女の不思議な世界観。
ですがこの色の使い方とか筆の曲線の優美さとか、これは女性ならではの表現といえるのではないでしょうか?
自分の奥底に眠る女性ならではの感性をものすごくくすぐってくれる絵画です。
マリーローランサンの作品はここで初めて見られました。作品数も少な目だと思いますので、ここで心ゆくまで見惚れてください。
②セザンヌの描き方の変遷
以前ピカソの描き方の変遷についてマニアックなものをブログで書きましたが、ピカソがキュビズムを立ち上げるときに、セザンヌという画家の影響を受けていました。
セザンヌはモネと同じ印象派でしたが、その後キュビズムの基礎ともなる「多視点の一画面化」という作風を確立しようとします。
何を言ってるんだって感じですよね。
えとね、図で描くとわかりやすいんですけど。
このようになります。要するに、一つの視点では見えなかったものが、複数の視点に増えることで見え、そして描かれるようになります。
上の図だと絵として不自然だと思うのですが、それを自然に描きこむために、セザンヌが描き方を変えていった様子をここのオランジュリー美術館では見ることができます。
一つの視点だと奥行きを感じ取ってしまうため、ものは立体的になります。なので、果物の表面のブツブツ感を、絵具を厚く塗ることで表現しています。
多視点になるとものが、見たものの表面を融合していくようになるので奥行き感がなくなります。そのため、より絵具を少なくして「面」っぽく表現されています。
なのでちょっと目が慣れたら「これはセザンヌの後期の作品だな」とかドヤ顔で語れたりするかもしれません。デートのときに是非ご活用ください。
そしてこういう風にセザンヌの描き方の変遷を見られるのは、セザンヌの回顧展などがない限りあまりありません。なので、オランジュリー美術館に行かれた際は、ゆっくりその変遷を楽しんでみてくださいね。
③シャイム・スーティンの気持ち悪い絵
初めて知った画家ですが、調べてみてやっぱり「気持ち悪い」という感想は間違ってなかったと一安心。
シャイム・スーティンも、モディリアーニと同じくポール・ギヨームによって掘り出された画家の一人ですが、彼はパリ国内では一切評価されず貧乏極まりなかったらしい。
それがアメリカの大コレクターによって絶賛され、パリに逆輸入され、やっと売れ出したのだから、もうこの頃から芸術の中心地は変わりつつあったのかもしれない。
彼の描く絵は本当に気持ちが悪い。
が、すごく不思議と引き込まれる。
なんか松岡修造が精神的に病んで絵画を描いたらこんな感じになるかもしれない。
とある教授は「叫びの芸術」と評しているらしいのですが。
なんというか描かれている形はぐにゃぐにゃに曲がっていて、絵具は何重にも重ねられて、人々の悩みや思いが混じっているのではないかと思うくらいに様々な色が混じりあっていて、気持ちが悪い。
ゴッホとはまた違う狂気じみた感じです。
初めて見た画風だったので新鮮に感じました。
スーティンの作品がまとまって見られるのもアメリカのバーンズコレクション以外にここくらいじゃないかしら?
是非ルノワールなどの色彩キレイな作品に癒された後の心を荒らされてみてください。
同じ時代、同じ作家の作品をまとめて見られるのは、その時代に活躍した画商のコレクションならではの醍醐味です。
大きな美術館とはまた違った楽しみ方ができるので、ぜひオランジュリー美術館に訪れた際はチェックしてみてくださいね。
それでは♪
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