使えない美術館公式アプリを使って東京都庭園美術館にいってきた話
こんにちは、ゆきびっちです。
最近溶けそうなくらいに暑くて死にそうです。
外での自撮りはなかなか勇気がいりますね笑
さて前回、ダウンロードされても実際すぐ使わなくなるであろう美術系アプリをご紹介しましたが、今回は個人的に使えると思ったアプリと、実際使ってみたアプリをご紹介します。
個人的に使えると思ったアプリ
<チラシで美術展を探す チラシミュージアム>
こちらは、チケットを購入できるEプラスが運営している、そのときに開催している大なり小なりの全国の美術展のチラシを集めた、キュレーション的な役割をしているアプリです。
美術展を紹介しているサイトやアプリもいくつかありますが、同じ美術展でもこのチラシミュージアムのほうが個人的には魅力的に見えました。
こちらで見られるチラシとは、よく美術館の脇や、たまに大きなものだとコンビニのコンサートのチラシ棚の中に紛れている、いわゆる、紙でできたアナログなチラシです。
こういうの。
よく考えてみるとチラシは、この両面印刷のA4~A3の紙に、人が「見たい!面白そう!」と思わせる仕掛けというか、キャッチコピーや名画などが凝縮されているため、最初に知りたい情報が一目でわかる一番効率の良いものなんですよね。
そして表紙はもちろん、ばっと目を惹いて思わず手に取りたくなるようなビジュアル、作品が出ています。
一般的な美術系のキュレーションメディアだと、美術展のタイトルのみが一覧で載っているだけで、その作品、作家を知らないと興味が湧かないのが正直なところ。
どんなに素晴らしい展示内容でも、ビジュアルのキャッチ―さは重要だと思う。
ということでチラシミュージアムについて、まとめてみると。
いいところ)
- やっぱり無料ダウンロードは気軽!
- その作品展の見どころや名作が明示されているので美術展の概要がまるわかり。
- 会期日程、開催場所までのアクセス情報など、必要な情報が分かりやすく記載されているのでいちいち調べなおさなくてもいいところが魅力。
- サイト内からもその美術館のチケット購入へ進めたり(Eプラスチケットへの登録が不可欠)、開館日もスムーズに確認したりできます。
- Facebook, LINE, Twitterに共有可能。ただ全て文字だけなのがちょっと不満。
悪いところ)
特にない。
しいていうのならば、Eプラスが運営しているものなので、そことの契約がないものについては掲載されないということ。
というのも、繰り返すようですが、一次検索で手に入れたいと思う必要な情報はある程度こちらで揃えられてしまうため、ちょうどいいアプリです。
個人的には一番手軽だし、重くはないので、暇なときにぱっとみて気になるものだけをスクリーンショットして保存したりして情報を収集しております。
さて、あと二つご紹介といいたいところですが、あとは有料だったりするので、上記のもの以外、特段ありません笑
ということで、先日ご紹介した美術館公式のアプリの中の一つを実際に使ってみて、東京都庭園美術館を周ってみました!
<実際に使えるか試してみた 東京都庭園美術館とアプリ>
美術館公式のアプリのホーム画面。
こちらのアプリも無料で、美術館の歴史や、常設の展示物を説明しています。
正直、それらの説明は実際の美術館の展示の横にあるので、新たな情報を得るという感じではありません。
展示物の説明の周りには人が集まりやすく、展示物と説明を交互に見ていると時間もかかってしまうので、混雑しているときにこのアプリがあると予習していけるから便利!
<フランスと日本のマリアージュ 皇族 朝香家の旧お屋敷>
建物外観。修繕とかはあるものの、大正時代の建物とは思えないくらいモダンな建物。
東京都庭園美術館は、目黒駅から歩いて15分程度のところにある皇族である朝香家の元お屋敷で、東京都の有形文化財に指定されています。
何がすごいって、建て直された1930年代当時の美術の潮流でもあったアール・デコの様式がふんだんに盛り込まれたお屋敷なんです。
パリの市街地には、いくつか残っているアール・デコの様式ですが、日本では結構珍しいかも。
アプリでもフランス人のアーティストが作った装飾と、宮内省管轄の内匠寮(皇族お抱えの建築家集団)による装飾が分けて掲載されてるため、それぞれの特徴を見分けることができます。
今回私はこのアプリを見ていて、ルネ・ラリックというガラス・アーティストによる作品に惚れてしまい、どうしても見たくて行きました。
ルネ・ラリックの作品は、箱根に専門の美術館があり、日本でも人気の高い作家さんですが都内では余り見られないため、実際にその作品が飾られている建物の玄関口で見たときは、見とれて一歩も動けませんでした。
美術館の玄関口にどーんとあるルネ・ラリックのレリーフ。フロストガラスによる鈍い輝きが神秘的です。
<日本の着物が大いに影響している アール・デコ>
そもそもアール・デコとはなんぞやとなりますが。
アール・デコは1910年代から1930年代にかけて、フランスをはじめとしたヨーロッパ中に広まった装飾のスタイルで、工芸、建築、絵画、ファッションなど多岐に渡って、そのスタイルは広がりました。
ちょうど、この前ご紹介したオートクチュールのような職人さんによる一点ものを捧げるという時代から脱却し、機械による工業化、製品の大量生産の時代に入ったときだったこともあり。
制作自体も一人の職人、一つの工房が作るというよりは、加工するための機械をもつ工場との協業が必要であり、大量生産、再生産でき、大衆にも広がったというのが特徴です。
素材も、鉄筋コンクリートや、合成樹脂、強化ガラスなど現代でも使用している工業的なものが中心になります。
ニューヨークでは、有名なあのクライスラービルがアール・デコの様式に基づいて建築されています。
ただ、日本の建築とアール・デコのフランス的なデザインってちゃんとマッチするの??という疑問があがりそうですが。
実はアール・デコは、ちょうどモネやゴッホが日本の浮世絵から影響を受けたように、日本の着物の図案からインスパイアされたデザインが多くあります。
例えばこちら
左:着物の古典的な柄の「青海波紋」
中央:旧朝香邸宅のラジエーターカバーのアイアン部分(日本人技師によるもの)
右:ルネ・ラリック制作の旧朝香邸宅のシャンデリアの一部分
海の波を簡略化したような扇型の文様が連なった柄は、着物の古典的な柄ですが、邸宅のあらゆる装飾で見かけることができます。
着物の古典的な図柄は、元々日本の四季、自然のもの、例えば植物、波、鳥などの形をより簡単な図形に変えて、それを連続的に使うことで総柄にしています。
これらの、物事を「簡略化」するデザインの考え方は、ちょうど1900年代のフランスのアート・シーンに出てきた新しい芸術様式とマッチしていたので、アール・デコの装飾にはこういった日本の着物の図案で見たことがあるような装飾がいくつか出てきます。
だからこそ、日本人にも馴染みやすい建築様式と感じることができるわけです。
<やっぱり美術館アプリはあんまり使えない>
とまぁ、ここまでアール・デコに触れることでなんとか文章を伸ばしてきましたが。
実際その美術館内でアプリを使ったかというと、全く使ってないわけで。
解説や綺麗な写真などを見て、美術館に行くという行動を起こすことはできたとしてもそこからの応用がなかなか難しいなぁと。
やっぱりアプリで作品を見るよりも、実際に作品を生の目で見るのが一番よろし!
ということで、美術館公式のアプリは予習・復習にはいいけれども、娯楽としての使用はできそうにないなぁと。
んで、どういう美術系アプリだったら「アプリをインストール → 定期的に見る → 一回使用したら消す」という行動に持っていけるかなと考えたのですが。
ぐるなびみたいに口コミレビューみたいなのをキュレーションアプリに入れ込むことかなぁと。
実際に美術館に行って、はい終わり、というよりは、
多くいる鑑賞者の方々が、美術展の中で一番自身が気に入った作品を写真と一緒にアップして一言レビューを加えて、美術展に行ったことを満足する、そしてその満足を反芻するという行為を意図的にプラスさせたほうがいいのではないかと。
そうしたらまた次に鑑賞者になるだろう人が、チラシや公式サイトで掲げる有名な作品以外にも「他人のお気に入り」に興味をもって、共有して、実際に美術展に行ったときにも、自分なりの鑑賞を深められるのではないかなと思いました。
そうしたら、美術系のコミュニティがアプリを通じてできて、美術に慣れ親しんだ鑑賞者から新しい鑑賞者を取り込むという、ネットならではの鑑賞者を増やす自然なサイクルができると思うんだけどなぁ。
ということで一言レビューのカリスマになるので、美術のキュレーションサイト運営の方は、ぜひとも作ってください。応援しております。
でも私が考え付くくらいだから、もう既にそういったものってあるのかしら?
あったらぜひぜひ教えてくださいませ。
ちなみに今回は邸宅の御紹介でしたが、邸宅以外にもこんな素敵なお庭もありました。
是非日差しの熱くない季節にお散歩にでもいらしてくださいませ。
それではよいお盆休みを!