WILLEM CLAESZ HEDA
Willem Claesz Heda ウィレム・クラース・ヘダ(1594-1680 Haarlem)
Still Life with Two Lemons, a Facon de Venice Glass, Roemer, Knife and Olives on a Table (1629) Oil on panel
(個人カメラにて撮影)
いきなり誰だよ、そんな人知らないよー
って声が聞こえてきそうですが
ごめんなさい、私も今回のMETで初めて知りました笑
巨匠たちの名画がひしめき合う中、何気なく通りすぎたオランダ絵画の中でものすごく惹きつけられてしまいました。
こんな出会いは本当に運命的!!
8割直感で生きています。
ちなみに作者のヘダについて調べると、とあるHPの最初に「Not much is known about Willem Heda」と出てきます笑
確かに、英語・日本語でも計4サイトくらいしかないうえに、情報がほぼおんなじ笑
これは逆にまとめやすくて助かる。
彼についてまとめると、
ハーレムに人生の拠点をおいたオランダ人画家で、17世紀オランダ絵画の黄金期において流行したモノクローム・バンケッチェというモノクローム風の晩餐図の画家とのこと。
要するに水差しとリンゴとブドウと・・・というようなテーブルの上のものなどを描いた静物画を灰緑色のような色調で仕上げたものになります。
ちなみに17世紀オランダ絵画というと、みんな大好きフェルメールの時代と同じになります。
Study of a Young Woman (1665-67) Oil on Canvas
(個人カメラにて撮影)
絵画史の中では影と光のコントラストが特徴的な(もっぱら影のほうが画面の大部分を占めている)バロック絵画の時期と合致します。
フェルメールもそうですが、いくつかはその影響を受けている様子がうかがえますね。
話がずれちゃいましたが、もうちょっとヘダの魅力を語る前に そもそもなんで静物画って何かいてあるの?という疑問から片づけちゃいましょう。
静物画には二つあります。
一つは象徴的な、もしくは寓意的なものを集めてあるテーマを鑑賞者に訴えかけるもの
(たとえば 髑髏=死の予感!とかね)
一つは画家の画力を存分にぶつけきったもの。
あ、あとコレクション画というのもどうやらあるらしく、それは富を誇示するためのものらしいです。
あれですね、現代のSNSのリア充たちのウェイウェイ自己主張と同じ感じじゃないでしょうか。
今回のヘダはといえば二番目の画力ガチンコ勝負の人です。
どうやら昔は宗教画や肖像画も手掛けていたらしいのですが、画家人生の油がのったときにはもう静物画に夢中になっていたらしいです。
では何がいいかって本当に緻密で写実的な描写。
一瞬通り過ぎようとしたときに、何で17世紀のゾーンに写真が置いてあるんだ?という疑問から立ち止まりました。
それくらいに精巧です。
Still Life with Oysters, a Silver Tazza, and Glassware (1635) Oil on wood
(個人カメラにて撮影)
※もっと詳細に絵画をご覧になりたい方は下のURLへどうぞ。
(MET HP: http://www.metmuseum.org/toah/works-of-art/2005.331.4)
一番目に行くのは 水の入ったワイングラスだと思うんですが、
油絵具で描いたの?本当に?嘘ついていない?って何度も絵画の横のリファレンスを確認したぐらいにスムーズにガラスの曲面が描かれ、それが光と共に冷たい、ソリッドな印象をしっかり保っているんです。
どうしても筆のことを考えると、毛束の線や油の塊などがこびりついてたり、もしくは絵具を重ねていくのが油絵の基本ではあるので、筆の跡が残ってしまうと思うんですけど
それがない。
あるんだろうけど、私の目には見えませんでした。
同じ理由で横たわる銀食器の光と影の陰影によるシルバーの重くて鈍い輝きとその冷たさを表現しているのが本当にすごい。
これって鋭い観察眼と忍耐力と、その感性がしっかりと指先に伝わる繊細な神経を持ち合わせていないとできない芸当だと思うんです。
そしてそのソリッド感を際立たせているのがレモンたち。
彼らのぼつぼつとした表面感(今その場で思い出してもその感触が手のひらに滲みでると思います)がその絵を見たときに感じたんです。ほら、梅干しをみたら口の中が酸っぱく感じる的な。
特に憎いのがレモンの皮がむかれている。
そうしたらレモンの果汁とその果肉のみずみずしさ、 おまけに皮の裏側のふさふさしたところさえもリアルに想像できてしまう。いや、体験してしまうじゃないかと。
そうなるともう大変。
背景の左上からかすかに明るくなっているのは、どこかから採光していて、それがモチーフの全体を淡く照らしていることや、そのかすかな温もり
オイスターから出てくる水分とその生臭さが自然と喚起されてしまって、何かしら自分の意識の定めどころがどこか分からなくなる。
有機物と無機物の対比。その触感、温度、匂い、味。
五感をたった一つの視覚で刺激されたのはなかなかない経験です。言い過ぎではない。
ちなみにとあるサイトでは、ヘダは「銀食器のようなスムーズで輝きのある表面に光が反射している様子を描く技術においては極めていた」と書かれていました。
超納得。
静物画は今まであまり興味もったことのないジャンルだったから、本当にMETに行ってよかった。素敵な出会いに感謝です。
結構名だたる美術館には収蔵されているようなので見に行ってみよう♪
次はもうちょっとメジャーな人について書きます。